エコキュートは夜間の安い電力でお湯を沸かし、タンクにお湯を貯めて使用します。お湯の最も大きな需要はお風呂で、お風呂は18時以降に使用します。エコキュートがお湯を沸かす時間は、深夜から早朝にかけてなので、沸かす時間と使う時間が12時間以上ずれています。その間、沸かしたお湯が冷めないように保温しなければならないのですが、いくら断熱材が入っているとはいえ、まったく冷めないわけではありません。
折角高効率でお湯を沸かしても、放熱によるロスがあったのでは元も子もありません。省エネを第一に考えるのなら、使う直前に沸かす方が良いのですが、それでは高い昼間の電気料金を支払わなければなりません。省エネだけどランニングコストが高いようでは誰も買わないので、省エネ性には多少目をつぶり、経済性を追求するために貯湯式になっているのです。タンクの断熱を強化することは、経済性にもつながることなので、DIYでできる範囲で断熱を強化してみました。
〓エコキュートの放熱ロス〓
まず、エコキュートの放熱ロスがどれくらいあるのか調べてみました。調べたのは11月の初旬、エコキュートのリモコンからタンク内の湯温を沸き上げが完了する早朝と、風呂を入れる前の夕方にチェックしてみました。昼間の時間帯は、多少お湯は使うものの、タンク内の湯温を極端に下げるお風呂の追い焚きなどはありませんので、お風呂を入れるまでは、ほぼ自然放熱による低下と見て良いと思います。
日付 |
平均気温 |
最高気温 |
最低気温 |
8時湯温 |
18時湯温 |
低下湯温 |
11月6日 |
15.4℃ |
20.3℃ |
10.6℃ |
74℃ |
68℃ |
6℃ |
11月7日 |
16.5℃ |
20.5℃ |
13.0℃ |
74℃ |
68℃ |
6℃ |
※三菱電機 SRT-HP43WZ1 430L(薄型)
その結果、朝8時から夕方18時までの10時間で、6℃下がっていました。1時間当たりにすると、0.6℃の低下で、24時間に換算すると、14.4℃となります。タンク内の湯温と外気との温度差や、風の強さなどによって低下率は変わると思いますが、結構大きな放熱ロスのように思えます。タンク容量は430Lですので、14.4℃を電力量に換算すると、
430L×14.4℃÷875kcal=7.0kw となります。 これをエコキュートで補うためには、COPが3.0として、7kwh÷3.0=2.3kwhの電力が必要になります。
実際には時間の経過とともにタンク内の温度は下がりますので、外気温との差は縮まり、低下率も小さくなると思います。感覚的には2/3程度の1.5kwh程度が放熱によるロスと思われます。
この時期、75℃の沸き上げで、私が最後に風呂に入る時はお湯はほぼ使い切ります。沸き上げに要する電力量は、概ね8〜9kwなので、1.5kwhの放熱ロスということは、15〜20%が放熱によるロスということになります。当然季節による違いはあると思いますが、計算上は一般に言われている数値とほぼ同じになりました。
〓断熱方法の検討〓
エコキュートの断熱強化は、昨年から考えていたのですが、なかなか良いアイディアが思いつかず、そのままずるずる来てしまいました。
・断熱塗料
当初考えた案は、エコキュートの筐体に断熱塗料を塗ったらどうかというものです。施工方法としては簡単なのですが、断熱塗料の性能が気になり、色々調べてみました。断熱塗料をネットで検索してみると、色々な商品が出てきます。しかし、その性能については今一つピンとこないのです。住宅の断熱材のように、熱伝導率などの性能を示すデータがなく、専ら用途の中心は屋根等の遮熱で、断熱ではないのです。中には「断熱性能はグラスウールの3倍」などという広告もあり、よくわかりません。
よく調べてみると、断熱塗料の熱伝導率は0.013kcal/m℃程度で、10Kのグラスウールは0.043kcal/m℃程度です。熱伝導率で比較すると、確かに断熱塗料はグラスウールより3倍程度優れていることになります。しかし、断熱性能は、熱伝導率×厚さで決まりますので、数十センチあるグラスウールと、数ミリしか塗れない断熱塗料では、比較にならないほどグラスウールの方が断熱性があることになります。なので、物理的に余裕があり、材質的にも問題がない場所に断熱塗料を塗って断熱するのは、あまり意味がないと言えます。断熱性能はあまり期待できそうにありませんが、最悪この方法と思いながら、他に良い方法がないか探ります。
・スタイロフォーム
次に考えたのが、スタイロフォームで箱を作り、すっぽり筐体を包み込んでしまう方法です。スタイロフォームの熱伝導率は0.034kcal/m℃で、20mmのものを使えば、熱抵抗は断熱塗料の塗布2mmに比べて4倍近くになります。これで断熱性能はある程度確保できますが、スタイロフォームを固定するために木枠を製作しなければなりません。また、雨で濡れないように、外側を防水する必要があります。防水は、プラスチックダンボールを加工する案などを考えました。しかし、エコキュートのメンテナンスのために容易に取り外しができるようにしなければなりませんし、木枠、スタイロフォーム、プラスチックダンボールの加工と、手間がかかり過ぎるため、こちらも今一つの方法です。
・アルミ遮熱断熱シート
最後に思いついたのが、アルミ遮熱断熱シートを筐体に巻きつける方法です。アルミ遮熱断熱シートは水にも強く、防水を考える必要がないため、施工が簡単です。しかし、アルミ遮熱断熱シートの断熱性能については、どこにも文献がなく、どの程度の断熱性能があるのかが良くわかりません。断熱塗料と同じく、「アルミ遮熱断熱シートはわずか数ミリでグラスウール数百ミリと同性能」という宣伝がありますが、その真意は定かではなく、にわかには信じがたいです。ただ、アルミ遮熱断熱シートの熱反射能力は確かだと思われ、厚さで勝負の一般的な断熱材とは違った魅力を感じます。
〓アルミ遮熱断熱シートを採用〓
散々思案した結果、手間、コスト、断熱性能を鑑み、アルミ遮熱断熱シートを採用することにしました。当初は、筐体の外側をアルミ遮熱断熱シートで包む計画でしたが、熱を反射するアルミ遮熱断熱シートが鉄板の外側にあっては、効果が出ないであろうことに気が付き、筐体の内側に
貼ることにしました。
筐体のカバーを空けてみると、タンク部は発泡スチロールに覆われており、筐体との間に少し隙間があります。それを眺めているうちに、筐体カバーにアルミ遮熱断熱シートを貼り付けるより、タンクを包こむようにした方が効果が高そうなことに気が付きました。タンクを包むようにすれば、熱の反射とともに気密性も確保することができ、より断熱効果が期待できます。基本的なことなのに、なぜこの場に及ぶまで気が付かなかったのでしょうか?
アルミ遮熱断熱シートは、ホームセンターで680円/mで売っていた厚さ2mmのものを6m購入しました。はさみで簡単に切ることができ、加工はとても簡単です。筐体内の制御基盤部と底の部分を除き、アルミを内側にしてタンクを覆い、気密テープでしっかり固定しました。筐体カバーを元に戻し、外からの見た目はまったく変わらず、断熱強化が完了です。筐体の外側からの断熱では、見た目も悪くなりますし、効果も落ちてしまいますので、最終的には最良の方法を選択できたと思います。
●抜群の費用対効果
アストロフォイルはアルミ大国アメリカで作られておりますので、高品質の維持、大量生産が可能です。その結果低コスト商品としてエアコン1台が不要になる程の省エネルギー効果で充分に設置採算が取れると考えられます。高性能化、差別化が叫ばれている、住宅産業待望の商品といえます。お客様に喜ばれ、省エネ効果が大きい「アストロフォイル」の採用をぜひお勧めします。 |
〓断熱強化の効果〓
断熱強化の作業中、筐体カバーを外して作業をしていたのですが、ほんのり暖かい感じを受けました。暖かいということは、タンクの熱が逃げているということで、これを少しでも抑えることができればと期待が高まります。
そして、その結果は下の表の通りです。
日付 |
平均気温 |
最高気温 |
最低気温 |
8時湯温 |
18時湯温 |
低下湯温 |
11月6日 |
15.4℃ |
20.3℃ |
10.6℃ |
74℃ |
68℃ |
6℃ |
11月7日 |
16.5℃ |
20.5℃ |
13.0℃ |
74℃ |
68℃ |
6℃ |
断熱強化 |
11月8日 |
16.9℃ |
19.9℃ |
13.9℃ |
74℃ |
69℃ |
5℃ |
11月9日 |
17.8℃ |
22.1℃ |
13.7℃ |
74℃ |
70℃ |
4℃ |
断熱強化前の2日はいずれも6℃の湯温低下でしたが、断熱強化後は、5℃、4℃と確実に効果が現れていました。11月9日は多少気温が高かった影響もあると思われますが、10時間で1℃、1時間当り0.1℃は確実に向上していると思われます。
24時間に換算すると、2.4℃の効果があり、放熱ロスの計算と同じく2/3で考えると、1.6℃の保温効果があるといえます。これを電力量に換算すると、
430L×1.6℃÷875kcal=0.79kw となります。COPが3.0とすると、実質の消費電力は0.79kwh÷3.0=0.26kwhとなり、月間では約7.9kwhの節電となります。
金額にすると、7.9kwh×8円=62円で、わずかではありますが、年間754円の節約となります。材料費は、680円×6m=4,080円かかっていますので、回収するまでには約5年半かかることになります。エコキュートの耐用年数から考えれば、十分に元が取れるでしょう。
例年10月を過ぎると、エコキュートの負荷が高くなり、夜間の消費電力が上がってくるのですが、今年は10月と11月の差がわずか4kwhで、昨年の11月と比較すると1kwh減っています。さらに、11月にはエコキュートの沸き上げ設定を「少なめ」(75℃)から「おまかせ」(90℃)にしないと、私がお風呂に入るまでお湯が持たないのですが、このレポートを書いている12月10日現在でも「少なめ」のままで湯切れせずに耐えています。寒さが本番を迎えるこれからの季節により大きな効果を出してくれることでしょう。これからの夜間消費電力がどうなるか楽しみです。
【エコキュートの断熱】
2009年12月
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