年々オール電化にする住宅が
増えています。東京電力管内では、オール電化住宅が2008年7月に50万戸を超え、全国でも200万戸を超えています。さらに、新築住宅では着工戸数の約50%がオール電化とのことで、今後さらにオール電化が増えていくことが予想されます。我が家で
もこの流れに乗ってオール電化にしたのですが、ガスの魅力も捨てがたく、オール電化かガス併用かで迷われる方も多いと思います。また、リフォームでオール電化にするパターンも増えており、本当にオール電化にして良いものか、悩まれている方も多いのではないでしょうか。そういった方々のために、実体験を踏まえ、オール電化の実際をレポートしたいと思います。
〓オール電化住宅とは〓
オール電化住宅とは、家庭内のエネルギーを全て電気でまかなう住宅のことをいい、具体的には、給湯、調理、冷暖房を全て電気でまかなう住宅のこと
をいいます。給湯はヒートポンプ式のエコキュートやヒーター式の電気温水器、調理は電磁誘導を使ったIHクッキングヒーターや電熱線を使ったシーズーヒーターなどがあります。一昔前までのオール電化はヒーター式の電気温水器と電熱線を使ったシーズーヒーターが主流で、主に単身世帯用の集合住宅などで使われていましたが、今ではエコキュートとIHクッキングヒーターが主流で、ファミリータイプの戸建に採用されています。
〓オール電化の費用〓
オール電化機器は、ガス機器に比べると高額です。ガス給湯器が10万円前後(工事費別)で購入できるのに対し、エコキュートは35万円程度(工事費別)になります。また、ガスコンロとIHでは5〜10万円の差があります。イニシャルコストではオール電化機器はガス機器に比べ、30〜50万円高く、リフォーム等で工事が必要な場合はさらに高くなってしまいます。
しかし、オール電化の月々のランニングコスト(光熱費)は、ガスの基本料がなくなり、深夜の安い電力を使うことによって、安くすることができ
ます。そのため、高いイニシャルコストを、低いランニングコストで回収する形になります。ここで問題になるのがオール電化機器の耐用年数で、長持ちすればするほど得になりますが、早く壊れてしまったら損になってしまいます。オール電化とガス併用のどっちが得か損かは、何年使えるかによって変わってきてしまうので、終わってみなければわかりません。それでは比較のしようがないので、一般的には
オール電化機器の耐用年数を10年程度として損得を計算します。
〓時間帯別電気料金〓
オール電化の低ランニングコストの秘密は、時間帯別の電気料金にあります。電力供給の都合上、昼間は電気が足らず、夜は電気が余ってしまいます。そのため、夜間の電気料金単価は安く、時間帯別電気料金の契約をすることによって、夜間の電気は昼間の1/3の単価で使うことができます。オール電化はそれをうまく利用し、光熱費を抑えるのです。
電気は貯めることができませんが、熱は貯めることができます。家庭内で最も消費エネルギーが大きいのは給湯ですので、夜間の安い単価でお湯を沸かしておけば、放熱による損失を考慮しても電気代は安くなります。その他、炊飯器や食洗機、洗濯機などをタイマーで夜間運転することによって、電気代を節約することができるのです。
オール電化の経済性のポイントは、家電製品の使用を如何に夜間にシフトできるかにかかっているのです。
各電力会社では、オール電化住宅にのみ適用する割引制度を設けており、躍起になってオール電化を推進しています。
●コンセントに差し込んで簡単&便利にボタン1つですぐ測定できます。
●電圧(V)、電流(A)、電力(W)、皮相電力(VA)、周波数(Hz)、力率(PF)、積算電力量(KWH)、積算時間(H)。
●液晶画面に数値で表示されひとめで測定できます。 |
〓オール電化のメリット、デメリット〓
ここではオール電化の中心機器であるエコキュートとIHクッキングヒーターについて、東京電力のホームページと東京ガスのホームページに書かれている宣伝文句について、実際の使用感からのコメントを書きたいと思います。
1.給湯(エコキュートVSエコジョーズ[燃焼式給湯器])
(1)経済性
東京電力:「エコキュートのランニングコストは燃焼式給湯器の約1/4」
東京ガス:「10年のトータルコスト(イニシャル+ランニング)でみた場合、ガスがお得」
評価の軸がずれていますが、東京ガスのエコキュートとエコジョーズとのイニシャルコストの差は約40万円で計算されています。これは妥当な価格だと思います。また、東京電力ではエコキュートのランニングコストは月々1,000円程度としていますので、ここから双方の言い分を検証してみます。エコキュートのランニングコストが月々1,000円で、燃焼式給湯器の1/4ということは、燃焼式給湯器のランニングコストは4,000円。その差は3,000円となります。これを12ヶ月、10年で計算すると、36万円になります。東京電力の言っていることも、東京ガスの言っていることも両方正しいですね。ただし、試算根拠になっている給湯負荷は、かなり少なめですので、給湯負荷が多ければ、10年以内でエコキュートが有利になります。エコキュートの経済性は、トータルコストでみると、優劣をつけがたいと言えます。
(2)環境性
東京電力:「エコキュートのCO2排出量は燃焼式給湯器に比べ約50%削減」
東京ガス:「エコキュートのCO2排出量はエコジョウーズに比べ1.7倍」
双方の主張は真っ向から対立しています。片や半分、片や1.7倍と言っています。計算根拠を詳しく見ていくと、電気のCO2排出量原単位を、東京電力では0.339kg-co2で計算しており、東京ガスでは0.69kg-co2と2倍以上で計算しています。また、エコキュートのCOPを東京電力は3以上(恐らく)、東京ガスは約2で計算しており、このような差になっています。COPは実際の使用感から3は出ていると思われますので、東京ガスの2は疑問。また、CO2排出量原単位は、0.339が「政府公表値」とのことで、東京電力の方が信憑性があります。よって、エコキュートの環境性については、東京ガスの言い分は苦しく、満額ではないにしても、エコキュートの方が優れていると言えます。
(3)利便性
東京電力:「簡単フルオートやスピーディーな追い焚き機能」
東京ガス:「エコキュートは湯切れが心配、メンテナンスが大変など」
利便性について、東京電力が言っているようなことは、燃焼式給湯器も同じですので、別段アピールすることもないでしょう。逆に東京ガスが言っている「エコキュートの湯切れ」は、足らなくなれば沸き増ししますので、実際の使用上問題になりません。さらに「エコキュートはメンテナンスが大変など」は、半ば揚げ足を取るようなコメントで、実際使っていて煩雑なメンテナンスの必要性は感じません。
(4)その他
東京電力:「閑静な住宅街でも安心、静かな運転音」
東京ガス「エコキュートは深夜に騒音がある」
エコキュートはヒートポンプ式なので、エアコンの室外機のようなものが夜中稼動します。枕元にこれがあったら確か眠れないと思います。しかし、置いてあるのは室外ですので、騒音が気になるといったことはまったくありません。もしこれが気になるようでしたら、エアコンも点けられませんね。
2.調理(IHクッキングヒーターVSガスコンロ)
(1)経済性
東京電力:「実際に3日分作って算出しました」
東京ガス:「IHはガスコンロより年間約12,450円光熱費が高くなる」
東京電力はガスコンロとの比較を避けています。そのことからもわかる通り、ガスコンロよりIHの方が光熱費は高くなってしまうのです。ではどれくらい差が出るかというと、電気料金は時間帯別に違うため、どの時間帯に多く調理をするかで変わってきます。東京ガスの試算では、22.39円で計算していますが、もし、夜間のみに使用すればガスコンロより安くなりますし、昼間の時間帯のみであればもっと差が開きます。いずれにしても調理を経済性でみた場合は、ガスコンロに軍配があがります。
(2)環境性
東京電力:コメントなし
東京ガス:「IHと比較してガスコンロは年間CO2排出量が約60%少ない」
東京電力がだんまりを決め込むように、調理の環境性は圧倒的にガスコンロが有利です。ただし、エコキュートのところでも出てきましたが、東京ガスの電気のCO2排出量原単位が大げさなので、実際は25%ほどの差と思われます。
(3)利便性・その他
IHとガスコンロでは加熱の特性が違うため、料理に対して様々な違いが出てきます。しかし、ここは私の得意分野ではないので、実際に使っている主婦の方々に聞くほうが良いと思います。キッチンにあまり立たないぐーたら旦那の雑感としてまとめます。一番知りたいところがこんなので申し訳ありません。
-個人的な雑感-
火を使わないことへの抵抗は、慣れればOKです。海苔があぶれない、イカがあぶれないといった問題はラジエントヒーターで出来るそうですが、あぶったことはありません。
火力については、ガスに引けを取りません。お湯を沸かすのがガスコンロよりも早いです。しかし、なぜか炒め物をする時に多少火力不足を感じます。それはそれで焦げ付かないというメリットもありますので、どっちもどっちです。
中華屋さんのようにフライパンを豪快に振れないという寂しさはありますが、これも慣れればOK。まったく動かせないわけではありませんので、玉子焼きをひっくり返したり、チャーハンを混ぜたりする時は台から持ち上げて振ります。
何といっても最大のメリットは掃除が簡単ということでしょう。サッと拭くだけというのは、不精者にとってはなにより便利です。
火を使わないということで、火事に対する安全性は強く感じます。火を使わないので、加熱している鍋に触って火傷する危険があると言われますが、子供も含め、まだそのような事故は起きていません。スイッチが入っていると音もしますし、熱ければ湯気も出ますので、危険であることは直感的にわかります。
最後に電磁波についてですが、直接感じることができませんので、何とも言えません。ただ、加熱中に鍋が振動する様子はあまり気持ちの良いものではありません。
以上のように、オール電化と一言に言っても、エコキュートとIHクッキングヒーターでは経済性や環境性が大きく異なり、「オール電化は環境に優しく、優れた経済性」とまとめるには無理があります。エコキュートは若干環境に優しく、経済性はケースバイケース。IHクッキングヒーターは、環境に優しくないし、経済的でもない。しかも便利な半面不便なこともある。これらを総合すると、オール電化の評価は結局使い方次第で変わってきてしまいます。
「オール電化は光熱費が安い、環境にも優しい」というイメージを鵜呑みにせず、評価できるところは評価し、そうでないところもしっかり確認した上で、オール電化を検討してください。
〓電化の歴史〓
オール電化から少し話がそれてしまいますが、電化が進み始めてから約130年。その歴史を振り返ってみたいと思います。
電気といえば、誰もが連想するのがエジソンではないでしょうか。エジソンは発明家として有名ですが、アメリカで電灯会社を設立し、電力供給を最初に始めた実業家でもあります。ニューヨークで初めて電力供給を開始されたのが1882年ということですから、今から127年前のことです。一方日本では、早くもその翌年の1883年に東京電燈(現在の東京電力)が設立されたのを皮切りに、全国の主要都市で電燈会社が設立されました。そして、1892年には、全国で35,000灯の電灯が取り付けられたとのことです。
日本の電化は、文明開花の勢いに乗って、欧米とほぼ同時に進み、電力供給の基礎が作られていきました。しかし、国策によって国産化された電化製品も、庶民にとっては高嶺の花で、爆発的な普及に至らず、昭和恐慌から戦争に突入してしまいます。戦前に国産化されていた電化製品は、扇風機、アイロン、電気時計、ラジオ、電気洗濯機、電気冷蔵庫、電気掃除機にクーラーと、今とあまり変わらないことに驚きます。
本格的に電化製品が普及を始めるのは、1950年台の後半からで、1960年には「三種の神器」が流行語となり、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビが一般家庭へと普及して行きました。その後も快適で便利な家電製品が続々と登場し、1970年代に登場したマイコンは、家電製品の自動化への進化だけではなく、パソコンやインターネット、テレビゲームなどを生み出し、私たちの生活スタイルまで変えてしまいました。
そもそも電気をエネルギーとして見た場合、その用途は光として、動力として、熱として、など、汎用性が高く、とても扱いやすいエネルギーです。その一方、電気を作り出すためのエネルギーは石油や石炭など、化石燃料に依存する部分が多く、また、送電によるエネルギーロスも大きいため、熱としてみた場合、ガスに比べて効率が悪く、コストパフォーマンスの面からも劣っています。なので、給湯や調理といった、加熱をする仕事は、ガスの方が得意で、今までの家庭では電気とガスを併用するのが常識でした。
ところが、1990年台に入り、ヒートポンプ技術が飛躍的に向上し、1の電気エネルギーから3〜4倍の熱を取り出せるようになったり、電磁調理器の性能が向上したことなどにより、ガスと互角、あるいはそれ以上の効率を発揮できるようになりました。こうした技術進歩がオール電化を可能にしたのです。
〓オール電化推進の裏側〓
経済的にオール電化が可能になったのは、機器の性能向上と、夜間電力の投売りにあります。1日の電気の使われ方は一定せず、ピークとオフピークの差は2倍近くになります。電気は貯めておくことができないため、需要に合わせて発電所の出力を調整する必要があります。火力発電や水力発電は、比較的出力調整が容易ですが、一度動き出した原子力発電は出力の調整が難しいため、電気を作り続け
なければなりません。
エアコンの普及やOA機器の普及が進み、ピークとオフピークの格差は年々広がっており、ベース供給として位置づけられている原子力発電の存在意義が脅かされています。原子力発電を推進するためには、オフピークを埋める必要があり、その担い手が、夜間電力を利用したオール電化なのです。国や電力会社が躍起になってオール電化を推進する裏側には、原子力発電の存在が見え隠れしているのです。ダイレクトにオール電化=原発推進ということではありませんが、オール電化にする以上、オール電化が原発の申し子であることの認識は必要だと思います。
【オール電化の実際-基本編-】
2009年5月
オール電化の実際 -実践編-
電気ガス比較 水道光熱費月報 エコ投資回収状況
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