分離発注の協力者 |
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W氏の最初の印象は、とてもせっかちな人だった。こちらが話しを切り出する前に、「最新の見積システムがあるからちょっと待ってて」といわれ、若い社員にパソコンを用意させた。建坪や設備を次々に質問され、それをパソコンに入力していく。見積の結果が出て、色々と説明してくれた。説明が一通り終わった後、ようやくこちらの話ができた。「色々ハウスメーカーを見て回ったがどこも納得がいかない。なので、分離発注で家を建てようと思っている。」するとW氏の顔色が変わった。W氏によれば、先程まで友人と話しをしていて、ちょうど分離発注につい議論していたという。そこから初めて会話が成立するようになった。 W氏によれば、「施主が自ら工務店となり、家を建てていくというのは理想的であるが、障害が多すぎる。現状ではまだ難しいのではないか。」とのことで、散在する障害について話をしてくれた。他のハウスメーカーでも同じ話をすると、「やめたほうが良い」の一点張りで、誰も賛同してくれない。当たり前である。施主が自分の会社の代わりをすると言っているのだから、「いいですねー」とは言えない。しかしW氏は他とは明らかに違っていた。なぜなら、分離発注の話しが出てから、散々自慢していたSホームの話しが一つも出てこなくなったからだ。Sホームそっちのけで話しをしてくれたのである。
その後、分離発注の議論をしたというS不動産のM氏を紹介してくれた。後日3人でお話しをさせていただき、S不動産の展示場に招かれた。W氏がM氏につないでくれた格好となったのだが、どうもM氏は自社の話ししかしてくれない。今まで見てきたハウスメーカーの人とあまり変わらなかったのだ。自然と足は遠のき、立ち消えとなっていた。 それから数ヵ月後、W氏からの突然の電話である。「その後どうなりましたか?」と聞かれたので、M氏とはそれっきりになってしまったが、分離発注で上棟までこぎつけたと答えた。W氏はSホームを辞め、株式会社Uに転職したという。その会社ではある程度自由に動けるので、分離発注で協力できるかもしれないという。W氏は私が出会ったこの業界の人の中で、数少ない、いや唯一の分離発注理解者である。早速お会いし、積もる話しをした。話しも弾み、再会した当日、現場まで連れて行ってしまった。 部材の発注は、O氏経由の商社から見積を取り寄せており、それでほぼ決まっていたが、試しに未発注分についてW氏に見積を出してもらった。出てきた見積は若干W氏のほうが安目だった。O氏経由の発注をひっくり返すのはO氏に申し訳ないと思ったが、今後W氏ともお付き合いさせていただきたいと思ったので、部材の一部をW氏にお願いすることにした。こうして 分離発注の協力者1人増えたのである。 【分離発注の協力者】
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